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飯綱には暗闇としての夜がある― 信州飯綱ロッジ 影山貞夫さん

影山さんは東京でお仕事されていましたが、1998年に飯綱に移住し、飯綱登山口の近くで「信州飯綱ロッジ」という宿泊施設を始めました。国内・海外の各地から訪れるお客さんと触れ合う日々の中、趣味の植物ウォッチングを続けています。

お客さんとのコミュニケーションが一番の醍醐味

写真以前は東京に住んでおりまして、住宅のインテリアの仕事をしておりました。ヨーロッパの家具を日本に輸入しまして、それを新宿代々木のショールームで販売する仕事です。非常に高価なもので、バブルの頃にはよく売れました。

長野オリンピックが開催された1998年に、飯綱に来て小さなロッジを始めました。東京は非常に人が多くてなかなか休まるところがない、若い人たちには刺激的でいいんですが、年をとるにつれて疲れてくるんですね。
飯綱には知り合いもいたものですから、オリンピックを目指して移住したんです。

最近一番刺激になったのは、グリーンツーリズム(農村民泊)の一環で中学生が3〜4人ずつここに泊まっていったんですが、その子たちが色んなことを話してくれてね。私が森の案内をしたり、夜一緒に話したりしたんですけれど、みんな「貞夫さん」って名前で呼んでくれるの。「おじさん」とかじゃなくて。
その子たちがみんな帰ってからレターを書いてくれて、メールくれる子もいてね。
こういう仕事の中で、こういう子たちに何か与えられればベストですね。そんな経験はなかなかない訳だから。皆さんと一緒に喜んだり悲しんだり、人とのコミュニケーション…そういうことが醍醐味かな。

暗闇としての夜が残っていることが飯綱の魅力

この地域はあまり観光化されていない、逆にそれがいいんです。自然がより多く残っている。つまり、夜の暗さ、暗闇としての夜がある。
この闇が分かると、ここの歴史が分かるんです。江戸時代より前に妖術使いがでてきたが、暗闇が人の想像力を育てるんですね。世の中が安全になってくると、妖術使いや忍術使いが必要なくなってくる。自然豊かっていうのは、緑がどうこうじゃなくて、夜の暗さがあるっていうことじゃないかな。

開発されていないから比較的植物の種類も多い。お客さんと植物の観察会をすることがあるんだけど、植物って、人間や動物の世界よりもずっと過酷な中にいるんだよね。競争に負けると枯死していく。人間や動物は足があるから、環境が悪ければ移動できる。温暖化や砂漠化からずっと逃げ続けることはできないけれども。植物の種間競争によって植生が長い期間かけて変化してゆくわけですが、それは別の角度から見ると環境の変化の指標になるのですよね、その植生変化をウォッチングすることによりその地域が良い方向に向かっているかどうかが解るわけです。

温暖化が進んだら植物は枯死していく。人間は食料も薬も植物に依存しているから、植物が少なくなったら人間は生きていけなくなる。
生態系の一部が崩れると全部が崩れてしまう。植物の多様性を維持することが大事なんです。

家族でくつろげる場に

飯綱にはエキサイティングな場所やドラマティックな場所っていうのはないんですけど、くつろぎが得られるところがいいじゃないでしょうか。自然でゆったりできる。
子どもたちが自然の中で色んな体験ができる、子どもたちに夢を与えられる、子どもと親がリラックスして交流できる、そんな場になればいいと思っています。

(2011年12月17日)

写真■ 信州飯綱ロッジ

〒380-0882 長野市富田1-185
TEL. 026 239-2821
>>信州飯綱ロッジウェブサイト

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